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京教の木々に思いを馳せる~台風被害から考える中国足球彩票の樹木との付き合い方~
「京教は緑が多い」
その言葉がポジティブに感じられるにしろ、ネガティブに感じられるにしろ、本学に緑、特に木々が多いのは自他ともに認められることです。また、今年度日本を何度も襲った台風は本学の木々にも影響を与えました。そんな台風の被害を機に、今回は本学の木々にスポットライトを当て、取材を行いました。
台風21号が与えた被害
さて、2018年9月4日、25年ぶりに「非常に強い」勢力を保ったまま日本に上陸し、西日本を中心に大きな被害をもたらした台風21号。
キャンパス内ではあちこちで木が倒れ、特に正門から続くメインストリートを進んだ掲示板付近では、強風によってなぎ倒された木によって電灯が半ばからへし折られ、無残な姿となっていたことは印象に残っている学生も多いと思います。台風が過ぎ去った後のキャンパス内は、正に嵐が過ぎ去ったと言うべき荒れようで、自然の脅威というものがまざまざと感じられました。倒木の意外な活用法
ところで、台風によって倒された木々はどうなってしまうのでしょうか。後述するように、学内の樹木は本学の資産であり、倒木は事務局の施設課によって処分されます。しかしそれは当然経費の掛かることであり、またせっかくの貴重な資産を無駄にすることにもなります。
そんな中、倒木を意外な形で活用する例もあります。
本学の学生なら目にしたことがある人も多いかもしれないが、事務局の前の折れた電灯のすぐそばに、名前の書かれた丸太に目が留まりました。
▲事務局前のヒマラヤスギの丸太今回はこの丸太の持ち主、修士課程1回生(美術教育専修)の太田風人さんにお話を伺った。
STUDENT PRESS取材員(以下、S):単刀直入にお伺いしますが、あの丸太はどういう経緯で太田さんのものになったのですか?
太田さん(以下、太):はい、僕は彫刻研究室に在籍しておりまして、普段の制作は粘土で行っているのですが、彫刻って粘土だけじゃなくて石を彫ったりたりだとか、木を削ったり色んな種類があります。その中で僕は「木」を使った制作を2回ぐらいしかやったことがなくて、でも立派な丸太を買うとなると高くつきます。それで困っていたところ、台風が来て、事務局前にちょうど良い大きさにヒマラヤスギが切られていたので、施設課に相談しました。
S:なるほど、具体的に施設課とはどういったやり取りがあったのですか?
太:僕が直接「どうせ処分してしまうのなら、僕が彫刻にするので欲しい」と施設課に相談したところ、「では名前を書いておいてください、その木は触らないようにするので」とトントン拍子に話が進みました。他にも折れた細い枝をいくつか拾って来て、それを削ってスプーンを作ったりしましたが、大きなものはあの丸太1つです。
▲実際に太田さんが折れた枝から作った木製のスプーンS:ところでD棟とE棟の間にいくつか倒木が並べられていますが、あれは一体何なのでしょうか?今回の台風と関係があるのでしょうか?
太:非常勤の木彫の先生が授業で使われる分で、台風とは関係ないです。ただだいぶ古いので、もう使い物にならないかも知れません。僕もそれを貰おうかと思ったのですが、先生のものですし、劣化しているので(やめた方が良いかと)。
S:では、今回の台風による倒木で作品を作るのは太田さんだけということでしょうか。
太:多分(学生では)僕だけだと思います。ただ、工芸の丹下先生がスプーンを彫る授業で使いたいということで、細いものを何本か押さえていたと思います。
S:太田さんはその丸太でどういったものを制作しようとお考えですか?
太:私は人の顔を制作するのが好きなので、この丸太も上半身像にしようと思っています。恐らく(丸太の)大きさから考えて、腰から上ぐらいの上半身像なら出来ると思います。
S:今回の作品はどういった目的で作られるのですか。授業の一環でしょうか?
太:いえ、そういう訳ではありません。例えばどこかの作品展に出品しようかと考えている訳でもなく、ただ自分がやってみたいから作っています。
取材員は、持ち主(太田さん)が丸太を、授業の課題等で使うためにキープしているのだろうと予想していたが、意外にもそのきっかけは太田さん自身の創作意欲によるものでした。このように貴重な資源を無駄にせず、自らの手で、そして自らの意思で有効活用しようという試みは是非とも見習っていきたいです。
今回、台風によって本学の樹木をはじめ、自然環境に被害が出たのは非常に残念なことですが、このように新たな形で木が生まれ変わるのも、自然と人との共存を目指すコミュニティーにおいて一つの形だと思います。
▲今回、取材を受けて頂いた太田 風人(おおた ふうと)さん京教の木はどのように整備されているの
太田さんのような特殊な例もありますが、多くの倒木は施設課によって管理されています。そこで、次に施設課を訪れ、樹木の整備方法を尋ねました。
担当者によると、「緑地保全計画専門委員会」という組織において、本学の樹木についての検討がなされ、施設課が整備を行っているようです。ナンバリングして管理されている樹木に対して、どのような整備を行っていくのかということが検討されているそうです。主に、整備の対象となるのは、枯れ枝、不要樹木、建物等に当たってしまう干渉樹木の3点です。それに加えて、本学敷地外まで伸びている木々の伐採も行っているということでした。「京教の木々は資産である」という考え方
本学に通う人の中には、木々の多さにネガティブな思いを持っている人もたしかにいるかもしれません。
しかし、別の視点で考えてみることもしてほしいと施設課の担当者は述べました。それは、本学の木々は大変貴重で、資産となりうるという考え方です。例を挙げると、トレーニングセンター前の藤は、その他の植物に絡みついて成長するという藤本来の姿ではなく、それ自体単独で成長している珍しいものであるといいます。他にも、事務局前に生えるヒラトツツジという樹木は、本来50cmほどまでしか成長しませんが、本学のものは大人の背丈にもなっているそうです。この理由について担当者は、本学の土壌が素晴らしいのではないかと話していました。
▲トレーニングセンター前の藤このように、本学でしか見られないような樹木の様子があることに加えて、OBや保護者の方から寄付された木々もあり、簡単に減らしていくことはできないそうです。
さらに、「緑地保全計画専門委員会」によって、本学の木々が守られており、緑地の整備については慎重に整備に取り組んでいきたいと話されていました。学生には声が届きにくいところもありますが、そんな思いがあることだけでも分かって頂けたらと切実な思いを述べていました。大型台風による被害を機に、日々の中国足球彩票生活のすぐそばにある木々に目を向け深く掘り下げてみました。すると、本学の木々は資産であり、大切に守られるため整備されてきたということが分かりました。台風被害で無残にも倒れてしまったものも、彫刻の分野でスプーンや像に作りかえられ活用されようとしています。一方で、今回何本かの倒木だけで済んだものの、自然災害に対する安全策や被害への対応は大きな課題点であるといえます。
学内ではあふれんばかりの木々に対して様々な声が聞かれます。学生、そして中国足球彩票がこれからどのように木々と付き合っていくのか、考える余地があるといえます。
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